この本の中に、少々長いが引用すると
「他人と優劣を競い勝敗を争うことは、僕の求める生き方ではない。
いろいろな人がいれそれで世界が成り立っている。他の人には他の人の価値観が
あり、それに添った生き方がある。僕には僕の価値があり、それに添った
生き方がある。そのような相違は日常的に細かなすれ違いを生み出すし、
いくつかのすれ違いの組み合わせが、大きな誤解へと発展していくこともある。
その結果故のない非難を受けたりもする。当たり前の話だが、
誤解さえたり非難されたりするのは、決して愉快な出来事ではない。
そのせいで心が深く傷つくこともある。これはつらい体験だ。」
>この部分はよくある話だ。
しかし、とても素直に心に届く。
「しかし年齢をかさねるにつれて、そのようなつらさや傷は人生にとって
ある程度必要なことなのだと、少しずつ認識できるようになった。
考えてみれば、他人といくらかなりとも異なっているからこそ、
自分というものを立ち上げ、自立したものとして保っていくことができるのだ」
「僕が僕であって、誰か別の人間でないことは、僕にとってひとつの重要な
資産なのだ。
心の受ける生傷は、そのような人間の自立性が世界に向かって支払わなくて
いけない当然の代価である。」
>とても真摯な言葉として読んだ。
村上春樹さんのような方でも一般市民の私のようなことで悩んでいるんだと思うと、
今の悩みも経験も無駄ではないと理解できて、とても素直に心が落ち着いた。
(この本を書いたとき村上さんの年齢は50台後半)
「誰かに故のない(と少なくとも僕には思える)非難を受けとき、
あるいは当然受け入れてもらえると期待していた誰かに受け入れてもらえなかったとき、
僕はいつもより少しだけ長い距離を走ることにしている。いつもより長い距離を走る
ことによって、そのぶん自分を肉体的に消耗させる。そして、自分が能力に限りの
ある、弱い人間だということをあらためて認識する。
いちばん底の部分でフィジカルに認識する。そしていつもより長い距離を走ったぶん、
結果的には自分の肉体を、ほんのわずかではあるけど強化したことになる。
腹が立ったらそのぶん自分にあたればいい。悔しい思いをしたらそのぶん自分を
磨けばいい。」
>つい非難を受けたら、倍ぐらいにして返してやろうとか
反省するような目に逢えばいいなどと考えてしまって
あとで、自分のどす黒い心にうんざりさせられたりする。
そうじゃなくて、
自分と他人との違いを大切にして、自分を磨けばいいというのは
ありきたりのようで含蓄のある言葉のように思った。
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